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●最下位から総代へ 小、中学校時代は、いわゆるよい子ではなかったですね。ぼくは四人兄弟の末っ子ですが、上の三人がとても勉強できるので、いつも比較されていました。そのうち二人は学校の先生になったほどですから、かなり優秀だったのです。 ぼくは小学一年生から中学三年生まで、成績はいつもクラスで最下位でした。中学校を卒業するときに、英語のアルファベットはAからGまでしか書けなかったほどです。自分はこの世の中に必要ないのではないかといつもすねていました。 ところが、高校に入ってとてもほめ上手な先生と出会ったことで、ぼくの人生は一変します。その先生はいつもぼくのことをほめてくれました。たとえば、テストで六〇点を取ると「六〇点か。すごいじゃないか」といった具合です。勉強がよくできる子が六〇点を取ったら「しっかりしなきゃだめじゃないか」と言われるかもしれませんが、全然できないぼくが六〇点を取るというのは奇跡に近いことでした。それを心の底からほめてもらったのです。ぼくはもっとほめてもらいたいと思って、次第に勉強するようになりました。 その甲斐あって、ぼくはクラスで一番になれたのです。やればできるということがわかって、自信もついてきました。卒業するときは学年全体で八〇〇人をごぼう抜きして、総代を務めたのです。このように一つの言葉、一つの出会いで人生というのは大きく変わってくると思います。 ●人生の最後に満点を取ろう ぼくの尊敬する人に本田宗一郎さんがいます。あの本田宗一郎さんは生前、「親も教師も、その子が人生の最後に満点を取るように育てなさい」とおっしゃったそうです。いくら学校の成績がよくても、卒業してからの長い人生の方がもっと大事だということです。自分にとって大切なことを見つけて、生き生きと仕事をして、人生の最後に「いい人生だったな」と振り返ることができたら、こんなに幸せなことはありません。 知識というのは価値観を生み出すためにあります。つまり勉強をすればするほど、自分にとって大切なもの、価値のあるものが見えてくるのです。よい高校、よい大学に行くというのも勉強の一つの目的でしょうが、それだけではないはずです。 ぼくは、人生で本当に大切なことは他人への優しさや思いやりだと思っています。どんなに勉強ができて優秀でも、思いやりや優しさがなければ、その人の人間的な魅力はないに等しいでしょう。 では、人生の最後に満点を取るにはどうしたらいいのでしょうか。 実は、ぼくは「一点突破」という言葉が好きです。これは何でもよいのです。得意なことを一つ見つけると、自信がついて何でもできる「でき癖」がつきます。すると、他のこともできてくるのです。そういった些細なことが、人生においていろいろな自信につながっていくのだと思います。
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