教育関係者、大注目! 大阪府高槻市立第四中学校区「ゆめみらい学園」の挑戦

2015.04.24

「先生が本気を出せば、短期間に学校はここまで変わる!」

大阪府高槻市立第四中学校区「ゆめみらい学園」の3校(高槻市立富田小学校、赤大路小学校、第四中学校)は、子どもや教職員が元気になる研究にしたいとの思いで、文部科学省の研究開発学校制度や高槻市の小中一貫教育推進モデル校指定を利用し、小中一貫もキャリア教育も、今までの校区・地域連携の財産を活かしながらも、改めて「ゼロ」からスタートしました。そして、さまざまな課題を乗り越えて、3校の先生方が文字通り一丸となって、素晴らしい実践の数々を作り出すことに成功しました。

その「ゆめみらい学園」のこれまでの軌跡が1冊の本になりました。
3校の研究実践を指導助言してきた前文部科学省調査官(現筑波大学教授)・藤田晃之先生と、平成22年度から26年度まで研究主任を務めた高槻市教育委員会指導主事・山本佐和子先生にお話をうかがいました。


山本佐和子先生(左)と藤田晃之先生

研究開発学校とは?

藤田 研究開発学校、通称「研発(ケンパツ)」とは、学習指導要領によらない教育課程の編成とそれに基づく教育実施を文部科学省が認めた学校のことで、創意工夫ある実践研究を通して新しい独自の教育課程や指導方法を開発することが期待されています。

研究開発学校としての指定を希望する学校は、第一次審査、第二次審査を経て、原則として4年間(平成24年度以前は原則として3年間)、文部科学大臣からの指定を受けることになります。研究開発学校としての調査研究に要する費用は「委託経費」として扱われ、文部科学省が支出します。ただし、研究開発学校としての指定期間終了後には、通常の教育課程に戻らなくてはなりません。

つまり研究開発学校は、一定期間、国のお金を使いながら教育改善に向けた取組をなし得る絶好のチャンスであると同時に、現行学習指導要領の枠内でも実施可能なものはそもそも対象とはならず、その成果は全国の学校に還元されるべきものとして期待されています。


(左から)赤大路小学校・第四中学校・富田小学校

教職員の戸惑いと熱意

藤田 このようなハードルの高い事業に自ら手をあげるには、相当の覚悟が必要です。しかし、中には「研究開発学校になって、独自の取組をして、いったい何を解決したいのですか?」「今、まさに直面している教育上の課題は何ですか?」と問いたい衝動に駆られる学校があることも事実です。

だが、「高槻市立第四中学校区」から提出された書類は違いました。いわゆるフォーマルモードで記された文面からは、先生方の「何とかしたいねん」という声が聞こえてくるようだったのです。私が“惚れた”のは第一にこの点でした。


(左)3校プラス保育所・幼稚園・地域のメンバーもつどう一貫研
(右)小小合同学年会・小中合同学年会

山本 現場の先生方の中には、当初、毎日の多忙感の上に、大きな指定を受けたことに対する反発の声もありました。1年目の研究実践は、少し進んではまた修正するという繰り返しでした。その後、「校区の子どもたちにつけたい力は何か?」を徹底的に話し合い、(1)じりつする力、(2)考える力、(3)見通す力、(4)つながる力の4つを柱にすえて、めざす子ども像を定めました。そして、「自分らしく今と未来を切り拓いてほしい」「今を積み重ねて、未来をつくってほしい」と考えて、「今」と「未来」をつなぐ新領域「いまとみらい科」を創設しました。


地域で活動する子どもたち

「いまとみらい科」が生み出したもの

山本 小中一貫が進む中で、3校の教職員の協働や子ども同士の協働は、さまざまなものを生み出してきました。校区みんなでつくる子どもたちのフェスタ「いまみフェスタ」や、校区のオリジナルソング「今と未来」、校区のキャラクター「みらいおん」などは、その一例です。


(左)四中生が考案した校区のキャラクター「みらいおん」
(右)校区学園名のプレート(クローバーは3校と地域を表す)

山本 「子どもたちと教職員が少しでも幸せになる研究を進める」という原点を忘れずに、研究実践に打ち込んだ私たちの軌跡が、誰かの元気につながることを願っています。