『プレゼンは資料作りで決まる!』刊行記念対談 天野暢子さん×高橋晋平さん(3)

2014.12.01

天野暢子さん+高橋晋平さん
プレゼン名手が教える「即決定!の法則 3」

――3回目の話題は、
「プレゼン力があって、人生がどう変わったか?」です。
プレゼン力を身につけたきっかけの話や、
企画を立てる上で大切なことなど、
話はどんどん盛り上がります。

プレゼン力があって人生が変わった?

陰の声: 天野さんも高橋さんも「プレゼンの達人」でいらっしゃいますが、「プレゼン力があって人生がこんなに変わった」ということはありますか。

天野: 私は今でこそ、『プレゼンは資料作りで決まる!』をはじめ、いろいろな本を書いたり、プレゼンの講師をしたりしていますが、実はほんの数年前まで普通にOLをやっていました。

高橋: そうなんですね!

天野: OLだったけれど、プレゼンを仕事にしようと思って独立したんです。独立初期の段階で本を出すことができ、そこからやはり人生が一変しましたね。昨日までOLだったこの人(自分)が、いきなり書籍の著者になったりするわけですよ。

高橋: ええ。

天野: 出版することで、そこから新しい仕事が入ってきたり、まったく知らない方から声をかけていただいたり、取材が入ったりということで、人生がだいぶ変わりました。

高橋: 出版のきっかけは何だったのですか。

天野: 私の場合、誰かのツテではなくて、自分が得意な企画書を書いて主たる出版社に一斉に郵送したことで刊行が決まりました。本当にひと言も話さず、企画書だけで出版が決まったんです。

プレゼン力で新しい仕事の扉が開いた!

陰の声: 天野さんのご著書のタイトル通り、まさに『話さず決める!プレゼン』ですね(笑)。

天野: (笑)まさにその通りで、それがクリアできたことも自分の実績の1つです。

陰の声: 「プレゼン力で新たな扉が開けた」という感じですか。

天野: そうですね。この出来事をきっかけに、「こういう企画をこういうふうに出せば、これが手に入れられるんだ」ということが1つずつわかっていきました。この体験があるから、そのほかの仕事も自分でやりたいとプレゼンしてとっていけるように変わっていきました。

高橋流プレゼンはなぜ生まれたか?

陰の声: 高橋さんは日々プレゼンの毎日だと思いますが、これで人生が変わったというような運命のプレゼンはありますか。

高橋: 私は入社以来ずっと企画の仕事をしていたんですが、最初は全然企画が通らなくて、すごく苦労した時期がありました。

陰の声: 企画が通らない時期がどれぐらい続いたのですか?

高橋: 入社して2~3年は、企画を出しても全部ボツるみたいな感じでした。それが、入社3年目のときに、「∞(むげん)プチプチ」という商品の企画提案をした際に、プレゼンとしても非常にうまくいって、上司からこれはすぐにやろうという決裁をもらい、商品化して大ヒットしたということがありました。その商品が1個売れるといろいろなことが変わるんですよね、いい方向に。

企画を通すコツを知る

陰の声: 具体的にはどんなことが変わりましたか。

高橋: まず、自分が作りたい商品を作りやすくなったということがあります。1つ実績ができると、「まあ、彼にやらせてみてもいいか」という空気が社内に生まれるんです。今まで作りたかった商品や、過去にボツった商品も復活して出せるようになったり……と、やりたいことができるようになりました。

天野: (大きくうなずく)

高橋: あとは、「∞(むげん)プチプチ」のプレゼンが成功したことで、どういうプレゼンがいいのかがすごくよくわかりました。今までダメだったプレゼンのどこがいかにダメだったかということがきちんと見えてきたんです。だから、そこからはプレゼンでも結構ツボを押さえた話をして、そこで企画が通りやすくなったということは変わりましたね。

今だからわかるプレゼンの反省点

陰の声: ご自分のプレゼンでダメだった部分というのは?

高橋: ギャグのような変な商品を作りたいということで、入社時からずっとやってきたのですが、最初は受けを狙うだけのプレゼンになっていたと思います。笑いを取るだけではやっぱりダメなんです。それを出すことでいくら儲かって、どうしてそれが売れるんだといった、商品としてのポイントが提示できないと、会社としては実現させる意味がないというか……。

天野: 会社ですからね。

高橋: はい。数字に裏打ちされたプレゼンでなければ、決裁者も意思決定は下せませんよね。ボツが続いていた当時はそうした意識が欠けていたんだなと思います。それに対して「∞(むげん)プチプチ」に関しては、絶対に通したいという気持ちもあって、すごく準備をしました。売れるロジックもあり、コストの理屈も合っていて、これは挑戦しようということで社内で決裁をいただくことができたと思います。

決裁に必要な数字を用意する

陰の声: 天野さんも『プレゼンは資料作りで決まる!』の中で、「コスト意識が決裁の決め手になる」と述べていらっしゃいますが、それは実感なさいますか。

天野: はい。たとえば、コップを例に考えると、「このコップを私が売ります。売るためのプレゼンをします」というときに、10円だったら相手の方に買ってもらえるかもしれません。でも、コップ1個が3000万円だったら、あるいは価格が提示されていなかったら到底買ってもらえない、決裁してもらえないですよね。

高橋: ええ。

天野: プレゼンに際しては、適切なコスト意識……たとえば最初にいくら、月々いくらかかりますということを示してあげないと、相手は決裁できません。コスト面の意識が抜けたプレゼンがとても多いので、もしなかなか企画が通らないという方がいたら、データの裏付けで金額や数字を出してあげると、通りやすくなると思います。

陰の声: 数字に裏打ちされたプレゼン資料でなければいけないと。

天野: そうですね。

「アイデア」と「企画」の違いって?

陰の声: 「アイデア」と「企画」の違いって何でしょうか。おふたりのお話ですと、コスト意識の有無が大きく関係しそうですが。

高橋: それはあります。

天野: とってもありますよね。

高橋: アイデアというのはその時点では空想でしかありません。だから、どんなに面白いと言っても、さっき天野さんがおっしゃったようにコップ1個に3000万円になったらそれは企画としては成立しません。アイデアをたくさん出すことは大事だけれども、数字を含めてそれをきちんと世の中に届く形でまとめるものが企画だ、と私は思っています。

――プレゼン力でさまざまな変化があったようです。
次回は「今だから語れる失敗プレゼン」です。
お楽しみに!”