『街角図鑑』イベントレポート

2016.06.16

「日本ピクトさん学会 presents 文化系スライドトークイベント vol.2 『街角図鑑』出版記念スライドトークLIVE」が岡山市のゲストハウス&カフェ・KAMPで開催されました。

出演は、本書の企画者にして編著者・三土たつおさん、送水口の木村絵里子さん、擬木とのぼりベースの伊藤健史さん、そして装飾テントの内海慶一さん。

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まずは、なんでもメーカーや型番が気になり、「街角博士になりたい」という三土さんが、その暗記のために作った「街角100本ノック」というアプリ。三土さんはプログラマーなのだ。クイズ形式で1枚の写真、例えばパイロンの写真を見せ、4択の回答を選び、正解すると次のパイロンの写真が出てくるというもの。かなり練習を積んだとみえ、回収ボックスの写真で「NPX-95!」などと答える。すごい。どこかで公開してくれないかな。

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それだけでは飽き足らず、もっと博士になりたい三土さんがアプローチしたのは「人工知能」。いま、人工知能のAPIがいくつか存在していますが、それらに写真を認識させることで型番などがわからないかというもの。試しに、三土さんが自転車に乗っている写真を見せたらきちんとそのように描写しました。ところが、街角のものは難しい。たぶん、だれもパイロンを認識させたりしていないのでしょう。単管バリケードの「うさガード」を認識させたところ、M社は「ケーキの上のおもちゃ」、G社は「ピンク・形・スマホ」。いいところを突くのだが、背後の画像を答えに含めるなど、ピントが難しい。学習させたい。

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続いて木村さんの「語られなかった、もうひとつの送水口」。本はページに限りがあるので、おもしろさの説明や正確な説明は冗長になるので泣く泣く触れない場合があります。トークはたくさん時間があるので、細かなところを説明しつつ、おかしみのニュアンスを共有していきます。

本書でも紹介している「埋もれ系」「包まれ系」などのほか、ゴミ置き場でゴミに埋もれていたり、周辺に物が積まれていたりと行った姿も紹介。でも、これらは送水口本来の役割を果たすためには問題があるとのこと。一刻を争うのだから、すぐに消防車のホースをつながなければならない。そのときに邪魔になる。なるほど、ただおもしろがるだけではいけないのですね…。

「送水口は、本来、一度も役立つことなく生涯を終えるのがいいのです」。そうか、そうですよね。

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伊藤さんは、まずは擬木史を。明治38年製の日本最古の擬木が新宿御苑にあったり、擬木の普及には井下清という東京市2代目公園課長と松村重という職人の尽力があったり…といったまじめ話に続き、本では小さくしか見せられなかった写真をスクリーンに大写しで解説。大規模な東屋の写真を見せ、茅葺き屋根を再現するなどあまりに手が込んだ姿に「だったら木で作ればいいじゃん!」と元も子もないことを…。

ここで既に時間いっぱいだったが、少しオーバーして、ラストは伊藤さんの「街のダイイングメッセージ」。ペンキで描いた文字が垂れてしまい、推理小説で被害者が死に際に血で書き残したアレに見立てるものです。「売地」「いらっしゃい」「←慶大16分」「キケン」などなど。大写しされる写真に、見る人それぞれがそれぞれの観点でクスリと笑ってしまう、そんなプレゼンで締められました。

イベント終了後は、会場がカフェということもあり、そのまま出演者とお客様の懇親会。自らの集めたものを披露しあう場面もあちこちで見られました。お聞きした範囲では仙台や東京、愛知、大阪、広島、鳥取からもお越し下さった方がおられました。お越しくださいました皆さま、ありがとうございました。(写真:nomutai)

●主催:内海慶一さんのイベントレポート
>> 『街角図鑑』出版記念スライドトークLIVEの記録 (ぬかよろこび通信)

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>> 『街角図鑑』出版記念スライドトークLIVE at KAMP