大江戸隠密おもかげ堂 笑う七福神
倉阪鬼一郎著(クラサカ キイチロウ)
A6判 272ページ
2015年04月03日発売
価格 601円(税込)
ISBN 978-4-408-55220-0
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隠密人情見世シリーズ、見参!
本郷竹町でひっそりとのれんを出す「おもかげ堂」は一見、美形の兄妹、磯松と玖美が人形を作り、売る店。武蔵、丹沢、美濃、近江など各地の山道を渡り歩いていた木地師と忍びの血を引く磯松と玖美はふだん、世にも美しい木彫り人形や、からくり人形も作っているのだが、表向きの商いのほかに裏の仕事が二つ。一つは、忍びの血筋を生かし、隠密回り同心・大河内鍋之助の下働きで、からくり人形を使って近在に起きる事件や咎人を追うこと。もう一つは故人を偲ぶため、人情味あふれる「おもかげ料理」を遺族にふるまうことである。
谷中近辺で謎の辻斬りが発生した。斬られた男のそばには大黒天の描かれた凧が置かれていた。死体の身元は不明で、七福神の判じ物は、辻斬りをなした下手人の仕業なのか、意味不明であった。次に起きた、二番目の辻斬りの現場にあったのは寿老人の根付。今度は死体の身元が判明し、それは乾物屋巴屋のあるじ、善吉という男だった。善吉は家族に、三月ほど普請場の仕事に出ると言い残したままで、行方が分からなくなっていた。そして三番目の辻斬りも身元不明の男で、かたわらには「毘」の文字だけがある、またもや凧。毘沙門天を暗示するものだ。
折よく巴屋の親族から、磯松と玖美は「おもかげ料理」の願いを受けた。二人は、大根や南瓜などあらゆるむきものを使って、鳥や花など様々な形あるものを作る。作られたのは、故人と遺族の思い出や、かなわなかった望みを再現する「料理」なのだ。磯松と玖美は、善吉の好んだ月見の様子や、生前に行きたがっていた日光陽明門をむきもので作り出し、親族一同の涙はいつまでも途切れることがなかった。彼らから辻斬りに関する証言も得られ、大河内とともに、普請場を装った辻斬り一派へと迫る磯松と玖美。だが一味はそれをあざ笑うかのように夜陰に乗じ、その魔手を磯松、玖美兄妹すらへも伸ばしてきたのだ。二人を襲う凶刃。美形兄妹は、辻斬り一味を返り討つことができるのか――。
■第一章 二つの裏仕事
■第二章 からくり尾行
■第三章 お助け屋
■第四章 月見蕎麦
■第五章 おもかげ料理
■第六章 尾行の果て
■第七章 笑う七福神
■第八章 夜討ち
■第九章 鑿と風車
■第十章 江戸土産
■第十一章 慈善粥
■第十二章 蔵の中で 終章 木彫りの狗