桜の首飾り
千早茜著(チハヤ アカネ)
A6判 264ページ
2015年01月31日発売
価格 652円(税込)
ISBN 978-4-408-55209-5
在庫あり
烈しくも切ない、桜と人生をめぐる7つの物語
あたたかい桜、冷たく微笑む桜、烈しく乱れ散る桜……桜の季節に、人と人の心が繋がる一瞬を鮮やかに切り取った、感動の短編集。ステージママを嫌う子役の女の子(「初花」)、謎多き愛人をめぐる二人の男(「花荒れ」)、見知らぬ女性から「青い桜の刺青の標本を探して」と頼まれる大学資料館のアルバイト(「背中」)……現代に生きる男女の幻想、羨望、嫉妬、自己回復、そして成長を、気鋭の作家が描き出す。
【藤田宜永氏の解説より抜粋】
「桜はいにしえから歌に詠まれ、小説でも幾度となく取り上げられてきた。日本人と切っても切れない花、誰にでも馴染むが奥の深い名花である。その名花を千早さんがどう作品の味つけに使うか、愉しみにしてページをくっていった。柔らかくて温かい桜もあれば、女の隠された色として顕れる桜もある。テーマと直結しているものもあれば、遠巻きに迫ってくるものもある。ともかく一作一作に趣向が凝らされている。しかし、どの作品からも、千早さんの世界が匂い立ってくる――」
【収録作品】
■春の狐憑き
美術館勤務のわたしの昼休み。初老の男性が言う。
狐は人の健全な心を喰うのだとか。喰われると心が解放されるらしい。
■白い破片
花見場所取りの際の雨宿り。声をかけてきた人懐っこい女。
そこで俺が思いだしたのは、冷たい笑いをする過去の女だった。
■初花
元女優のママは、小六のあたしを無理やり華やかな世界で注目させたがる。
いやになったあたしは花屋さんで…。
■エリクシール
わたしは夫の亡妻の身代わり……それに気づいてしまった女は、
バーで知り合った男と愉悦の時間をもっていたが。
■花荒れ
国税局の男に私は、「ゆきちゃん」と名乗る女との関係を聞かれたが、
二人の関係は和菓子がきっかけに過ぎなかった。
■背中
大学内外から持ちこまれる資料を整理するバイト中の僕。
四角四面の上司のもとに、刺青の標本を見たいという女の電話が…。
■樺の秘色
亡くなった祖母の家の庭に私が見た少女の幽霊。
家族にもわからない少女の姿を見えていそうなのは、私のほかに風来坊の男。