辞めない理由
碧野圭著(アオノ ケイ)
A6判 340ページ
2014年10月04日発売
価格 652円(税込)
ISBN 978-4-408-55187-6
在庫あり
大ヒット『書店ガール』の原点!
「君のいうことはもっともだ。君がそこまで言うのなら、異動させてもらえるように浅賀部長に相談してみるよ」
真野は嬉しそうに言った。まるで和美が自分から言い出すのを待っていたかのようだ。
口に出して「異動する」といったとたん、それは真実になった、そういう気がした。
『Fame』を離れる、それも自分から。そんなことは今この瞬間までまったく考えたこともなかった。入社してからずっと『Fame』にかかわり、『Fame』を大事に思ってきた。これからも大事にしたいと思ってきた。
だけど、もうだめだ。
こんな男たちとはもう、一瞬たりともいっしょに仕事なんてできない。
編集部に残る、ということは彼らのために仕事するということだ。雑誌での手柄は結局、編集長の手柄になるのだから。
そんなことは、もう二度とできない。たとえ、副編集長に留めるといわれたところで、やりたくない。
この男どもの顔を、もう一瞬たりとも見ていたくない。
「よろしくお願いします」
和美はそう言って深々と頭を下げた。(本文より)
人気女性誌「Fame」副編集長の七瀬和美は37歳。共働きで子育てをしながら、実質的な編集長として部員をリードしてきたが、リニューアルをめぐって社の上層部に嫌われ、「新雑誌準備室」という名の閑職へ追いやられる。理不尽な仕打ちに加え、学校では娘をめぐるトラブルも発生。退社するかどうか悩む和美だったが、「働いてるママが好き」という娘の言葉に触発され、ある大きな「挑戦」をはじめる――。馴れ合いだらけの男社会に「カツ」を入れる、痛快なお仕事エンターテインメント! シリーズ3作の累計が25万部を超える大ヒット作になった『書店ガール』の「原点」ともいうべきデビュー長編がいま、実業之日本社文庫で甦る! すべての働く女性必読の一冊です。