牛丼愛 ビーフボウル・ラヴ

小野寺史宜著（オノデラ フミノリ）

人生は、並、ときどき特盛

「初めは話しかけても応えてくれなかったんですけど、あることをきっかけに、どうにか」
「あることって？」
「『牛丼おいしいよね』って言っても返事をしてくれなかったから、『わたしデブでしょ？　だから大好きなの』って言ったんですよ。『好きで好きでたまらなくて、気がついたらここで働いてた』って。そしたら、トモロウくん、つい笑っちゃって。それから、少しずつ話してくれるようになりました。あ、でも勝手な値引きとか、そんなことはしてないですからね」――（本文より）　

時給はいいけど、仕事はキツイ。深夜、強盗に狙われる事件も増えている。そんなリスクを顧みず、「美味い・安い・早い」を求めるお客さんのため、「牛丼屋」という職場で働く若者は多い。しかし、彼らが抱える事情はさまざまで……。牛丼屋で交錯する“おかわりのできない”ひとつひとつの人生を、クールな筆致でテンポよく描く。話題作『転がる空に雨は降らない』の新鋭が放つ、傑作牛丼屋エンタテインメント！