「ニュートリノと宇宙創世の謎」書影

ニュートリノと宇宙創世の謎 ニュートリノは本当に光より速いのか?

佐藤勝彦監修(サトウ カツヒコ)

編集工房スーパーノヴァ編著(ヘンシュウコウボウスーパーノヴァ )

新書判 228ページ

2012年04月12日発売

価格 838円(税込)

ISBN 978-4-408-10925-1

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素粒子の性質から宇宙創生のメカニズムまで

2011年9月26日、欧州合同原子核研究所(CERN)は素粒子ニュートリノが光よりも速く飛ぶとする衝撃的な実験結果を発表した。これはアインシュタインの特殊相対性理論である「真空中では、光速を超えるものはない」という“宇宙の制限速度”を土台に組み立てられた特殊相対性理論を否定することとなり、実験結果が正しければ、摩天楼のような現代物理学を支える2本の柱、「量子論」と「相対性理論」のうち、「相対性理論」を根底から覆すことになる。この論争はCERNの実験装置の不具合との発表がされたが、ニュートリノを検証することで、宇宙創生の謎が解明される一端になることは変わりない。しかし、私たち一般人にとって、「ニュートリノとは何か?」「どのような実験をしているか」など、よくわからないのが事実である。

本書ではまずはじめに、宇宙にある物質をつくるもととなる素粒子、4つの基本的な力を媒介する素粒子など、素粒子の世界に分け入り、ミクロな量子宇宙がいかにしてマクロな宇宙をつくりあげていったかという“宇宙創生のグランド・デザイン”を考えてみる。それはまた、宇宙が冷えていくにつれ、進化(分化)するシナリオを通して浮かび上がってくる、壮大なスケールの「宇宙の歴史」に、ニュートリノがどのように“顔”を出していったかということを明らかにする重要な作業である。

そして超新星からのニュートリノをとらえることのできたスリリングな一瞬と、ユニークな発想でつくられた“ニュートリノ天文台”の実際。さらに、ニュートリノが質量を持っていることをはっきり示すことができた、スーパーカミオカンデの功績、“ニュートリノ振動”と、宇宙の成り立ちとの関連に触れていく。また世界の最先端を行く日本の「ニュートリノ研究」と、現在進んでいる最先端の実験の意味を解説し、最後に光速を超えるニュートリノが見つかったとされる報道を、今の時点でどう受け止めたらいいのかについて考えてみる。

さあ、素粒子という超ミクロの世界から、宇宙という超マクロの世界を考える旅に出発しよう。