第11回 デービッド・ブルさん
それぞれが学びたいことを学べるように
 小学校までは簡単な文字の勉強や人と一緒に物事を進めることを学んで基礎を作る。そして12歳くらいから、それぞれの興味に合わせて、自分で先生を選んで、自分で授業を受けに行くシステムになればいいのにと思っています。
 広い部屋に、決まった席、決まった時間で授業を受けるのではなくて、この子はフルートに興味があるとなれば、フルートを教えられる先生を探してくる。また別の子はリポーターに興味があるからリポーターの先生を探す、というようになるといいですね。
 もっと言えば、会社で働いている人がいて、その人の働いている席のとなりにもうひとつ席があって、学校から子どもたちが学びに来る。働いている人にとっては少し邪魔になるでしょうが、若者と話しながら、少し仕事をやらせて経験させる。半分仕事半分勉強。ひとつの職場にいなければならないことはないですから、決められた予定があるわけではない。明日は違うところに行って学んでもいいわけです。仕事と勉強が同じ場所でできる。そのようなシステムができたらベストだと思います。
 つまり「若い社会人」になるのです。サラリーマンなどのなかに混じって学び、経験もつむ。例えば、パイロットになりたい!と思っても個人的に経験をつむことはできません。それならばパイロットの現場に行ってみて、実際に仕事を見て、現場のパイロットの先輩からこんな本を読んでみるといいと勧めてもらうほうがいいでしょう。
 つまり、人によってやりたいことを勉強できるシステムが必要なのではないかと思うのです。


女性の髪の毛の一本一本まで繊細・丁寧に彫られている版木。現在はお店に来るお客さんの応対でなかなか新作を作る時間がない。
今の時代の生き方を
 昔、人々が工場で働いていた時代には、みんなが同じ時間に同じものを勉強するということに意味がありました。ですが、今はみんなの生活がそれぞれ違います。リポートをする人もいれば、木版画を作る人もいる。また、これまではみんなに仕事がありましたが、これからはハイテクノロジーのためにみんなには仕事がいきわたらない時代になりそうです。例えば車の製造はほとんどロボットがやっています。
 私はカナダの大学をやめたことで今の道までたどり着きましたが、日本では大学をやめるとかなり多くの道を絶たれてしまいます。カナダのような国はセカンドチャンス、サードチャンス、フォースチャンスがあります。今は変わってきてはいますが、この国ではそのようなチャンスに恵まれることは難しいでしょう。だから私は、日本の若者にアナザーチャンスを与えてあげてほしいと願っています。私は37歳で素敵な出会いがあったのです。18歳から20歳そこそこではまだ自分が何者かなんてわからないはずです。
 いろいろとお話しましたが、私は8時からきちんと席について英語の勉強…というようなタイプではありませんでした。私は変わったタイプだったのかもしれません。ですから、私からみなさんへのアドバイスはありません! これまでのお話はあくまで私個人のケースのお話なのです。
(写真/構成 中込雅哉)


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