第46回 囲碁棋士 梅沢由香里さん

「体験は多ければ多いほどいいので,特に中学生の方に申し上げたいのですが,好きなことはなんでも挑戦してみてください」(~所属事務所オフィスにて~)
プロ棋士の世界
 プロ棋士の収入は基本的には大会の対局料ですが,他にも企業の指導講師をしたり,イベントに参加したりすることもあります。そうした収入以外の活動では,私も含めて棋士はみんないろんな研究会に入って,囲碁の研究をしています。
 対局数の多い少ないは,トーナメント戦ですので棋士の成績によって違ってきます。負けてしまうとその後の対局がなくなってしまうからです。
 対局の前に対戦相手の研究をする人もいますが,私はやりません。もちろん,囲碁にも多少は定石というのがありますが,将棋や他のゲームと違うのは基本的にはゼロから始められるところです。全部自分で描くことができるので,強くなるとそれが自由でとてもおもしろいのですが,始めたばかりの人には「自由すぎてどこから手をつけていいのかわからない」とよく言われますね。
 囲碁に強くなるための秘訣は,とにかくたくさん打つことです。慣れることは大切だと思います。スポーツでもなんでもそうですが,ルールブックを読んでもよくわからないことが,やっているうちに「ああ,こういうことだったのか」と気づくことがあると思うのです。囲碁もそうですね。とにかくやってみることだと思います。
 負けてしまった時の気分転換ですか? 大人になって困ったなと思うのは,なにか買いたくなってしまうことですね。最近では食べ物なら買ってもそんなにお金もかからないですから,よく食料品売り場にいますよ(笑)。


「ヒカルの碁スクール」名誉校長
 おかげさまで,私が監修をさせていただいた漫画「ヒカルの碁」(週刊少年ジャンプ/連載は終了)のヒットで,子どもたちの間で囲碁ブームが続いています。
 そうした中で,日本棋院では支部の囲碁クラブを中心に北海道から九州まで全国六十五ヵ所で「ヒカルの碁スクール」という入門・初級教室を土曜日に開いています。私も名誉校長ということで,時間の空いている時には関東の教室を中心に参加しています。今の子どもたちは,私のようにわけがわからないうちから囲碁を始めるのではなく,みんなヒカルにあこがれて,自分から囲碁をやりたくて来ているのでとても熱心だし,また,そのほうが強くなりますね。やはり自主的に始めるというのはとても大事なことです。それと,大人と子どもでは吸収力が違いますから,同時に始めたら子どものほうが絶対に強くなります。
 私はいろんな席にお招きいただくことで「碁にはこんなにいい面があったのか」ということに気づくことがあります。それはプロになってから見えてきたことですね。
 碁を始めるきっかけはなんでもいいと思います。これまでは碁の魅力を大勢の人に伝えるのがすごく難しいことだったので,漫画やアニメには心から感謝しています。

(写真・構成/桑田博之)
<<戻る
3/3


一覧のページにもどる
Copyright(c) 2000-2024, Jitsugyo no Nihon Sha, Ltd. All rights reserved.